2025年03月11日
東レ株式会社は、2023年に開始された心電図検査サービス向けの業務管理支援システムを開発した。本システムでは、kintoneを活用して検査業務を管理し、東レ・メディカル株式会社が提供する心電図検査サービスの運用を支えています。
新規事業でkintoneを導入するに至った背景や、当社のkintone開発支援サービスをご利用いただいた評価やメリットについて、新事業開発部門の野口様にお話を伺った。
◆導入前の課題や背景
新規事業のため、システム開発と業務プロセスの構築を同時に進めていく必要があり、ゼロからの設計や業務プロセス変更時の柔軟なシステム改修対応が求められる
◆導入の決め手
kintoneは必要十分な機能を有しており、他社システムよりも安価に開発・カスタマイズができ、ユーザーレビューと開発を繰り返すアジャイル開発も可能だった
◆導入後に得られた効果
医療機関、東レ・メディカル株式会社、物流会社、解析会社の複数社間での共同利用システムにより、スムーズに業務連携ができ、高いセキュリティを持つ安全なシステムで受付や配送のサービス提供が可能になった
先端材料・革新技術で人々の健康に貢献する東レ株式会社
東レ株式会社は1926年創業、合成繊維・合成樹脂をはじめとする化学製品の製造・加工・販売を行う大手総合化学メーカーである。炭素繊維の開発・販売では世界有数の企業として知られ、まもなく創業から100周年を迎える。
東レグループでは新規事業として2023年から心電図検査サービスをスタートした。従来の心電図検査は体に心電計のパッドを貼り付ける必要があり、皮膚へのダメージが懸念されていた。また、医療機関に来院しての検査は短時間のため、心臓の異常が発見しにくい課題もあった。
そこで東レ株式会社は専用のウェアを用いて最長2週間の心電図測定ができる、ウェアラブル心電図測定システムを開発。粘着剤で皮膚に貼り付ける必要がないため、肌がかぶれるリスクを軽減しながら、来院することなく患者自身で心電図測定ができるサービスの提供を東レ・メディカル株式会社より開始した。
システム導入前の課題
こちらの心電図検査サービスは、以下のようなプロセスで検査完了まで進む。
①医療機関が検査受付をkintone上で入力(患者情報、ウェアのサイズ、検査日時など)
②kintone上で入力内容に不備がないかを確認し、検査IDを自動発行、物流会社にも通知
③株式会社LOZIのSmartBarcodeと連携し、配送用バーコードが生成される
④物流会社から患者の住所へ検査キットが発送される
⑤心電図測定が終わると、患者が検査キットをポストへ投函
⑥測定データを解析会社が確認・解析し、検査結果として医療機関へ納品
※システムの概要イメージ
「患者さんの自宅に検査キットが届くサービスのため、医療機関と東レ・メディカル株式会社だけでなく、物流会社を間に挟む必要がありました。医療機器を扱うサービスの性質上、ヒューマンエラーを未然に防ぐ仕組みは必須です。また、検査後は確実に機器を回収するために、機器が今どこにあるのか把握できる機能も欠かせないと考えました」と担当の野口様は話す。
医療機関の事務的負担を減らしながら、いかにミスなく正確な検査結果を納品できるかは、システム開発にあたって重要なポイントだった。加えて、新規事業のため現状の業務プロセスが存在せず、ゼロからの設計が必要な点もこの開発プロジェクトの特徴だった。万が一途中で業務プロセスが変わっても、そこへ柔軟に対応できるシステム開発手法が求められていた。
kintoneをベースとするシステムを導入した理由
新規事業にあたり東レ株式会社がシステム開発を検討した際、大前提としてクラウド上で各種処理ができることを挙げていた。他社のクラウド型システムではカスタマイズに対応していないものも多く、一部機能を追加するだけでも数百万円以上と膨大な予算が必要な点もネックだった。
「当サービスを提供するには、医療機関、東レ・メディカル株式会社、物流会社、解析会社の複数社が連携する必要があります。他社では連携型の利用モデルを想定していないシステムがほとんどでした。また今回のプロジェクトはシステム開発と業務フローの構築を同時に進めるチャレンジングなものであり、開発のスピード感が求められます。kintoneであれば当社が求める基本機能を有しており、事業プロセスが変更となった際もスムーズな機能変更・拡張ができることから、アジャイル開発が可能な最良な選択肢と考えました。この方式により、短期間で実際にシステムを触って操作を確認し、関係者とコンセンサスを取ることも容易にできました。」(野口様)。※kintoneの強みやアジャイル開発に適した特徴
kintoneをベースにしながら、配送状況をトレースができる株式会社LOZIの「SmartBarcode」を組み合わせ、数ヶ月と短期間の開発期間を経て試験運用を実現した。
システム導入後の変化、使用した感想
「医療機関による情報入力や配送・返送の流れも、現在のところミスなくスムーズに進んでいて助かっています」と語る野口様。SmartBarcodeをスキャンして入力した配送情報をkintoneに自動連携することで、kintone側でも最新の配送状況を確認できるように設定した。万が一トラブルが発生した場合もスムーズな対応が可能で、安心感があると言う。
野口様は「医療機関をはじめ複数の事業者が絡むシステムのため、情報の機密性は慎重に検討しました。開発段階ではkintoneの中で細かにセキュリティ設定をお願いし、患者さんや医療に関する情報が漏れることのない、安全なシステムが実現しました」と振り返る。
2023年10月から試験運用をスタートし、本運用に入ってからは1年ほどが経過した。全体を通してシステムに大きな問題が発生することはなく、現在も順調に稼働して安定的な業務の進行に貢献している。
今後の事業遂行においてシステムに期待すること
「kintoneの基本機能を中心に利用したシステムのため、設定変更がノーコードで容易にできる点が大きなメリットだと感じています。ユーザーのニーズに応じて、コメントなどのUI要素の調整や通知タイミングの変更など、今後も柔軟な運用がしていけると期待しています」と野口様は説明する。データ連携がスムーズにできるようになったことを受け、今後は社内の他システムとの連携を進め、事務処理の効率化も視野に入れている。
ビジネス上の迅速な意思決定が求められ、業務プロセスや人材の流動性が増す昨今、システム開発においてもスピード感が重視される。従来の「開発要件を初期段階で確定させ、工程を一つずつ順番に進める」開発手法では、ビジネスの潮流から取り残される可能性もある。
今回の心電図検査サービスに伴うkintoneをベースとしたシステム開発は、要件の変化に流動的に対応しながら、こまめな改善を繰り返してリリースまでのスピードを早めた。市場や顧客の変化に合わせて開発内容を見直せるアジャイル開発は、新規事業などの不確定要素が多いプロジェクトにも適した開発手法と言えるだろう。
ぐーどろでは東レ様の今回の事例のように従量課金開発やアジャイル方式での伴走支援開発、もちろん請負での開発サービスも提供しています。各種メジャーなkintoneプラグインや連携サービスに対応できることはもちろん、AWSや本件のようなSmartBarcodeなどを活用した外部システム連携の開発や、Google Maps Platformを活用した地図ソリューションの開発なども得意としておりますので、ぜひご相談ください。
参考情報
・配送システムSmartBarcodeについて(株式会社LOZI)
・ぐーどろの提供するkintone開発支援サービス紹介資料ダウンロード
・Kマッププラグイン(Googleマップ連携)製品説明資料ダウンロード
・🕺ダウンロードなしですぐに試せるオンラインデモサイト(ID/Pass: tokyo/tokyo)