Excel在庫管理に限界を感じたら?kintoneで失敗しない運用方法を徹底解説

2025年12月20日

 

1. まだExcelで消耗していませんか?在庫管理の「あるある課題」

在庫管理のイラスト

「在庫管理表_最新.xlsx」「在庫管理表_最新_v2.xlsx」……。

サーバー内に似たようなファイルが溢れ、どれが本当の最新情報なのか分からない。そんな状況に頭を抱えていませんか?Excelは手軽で便利なツールですが、複数人での同時編集や履歴管理には限界があります。

よくある課題としては、

・手入力による数値ズレや転記ミス
・「どこに在庫がある?」を特定の人しか把握していない属人化
・拠点ごとの在庫状況が横並びに比較できない
・更新履歴が追えず、原因分析ができない

といったものが挙げられるでしょう。
こうした問題は、組織規模が大きくなるほど業務のボトルネックとなり、現場だけでなく管理部門・営業部門にも影響が波及します。

そろそろExcelを卒業し、チームで共有できるシステムへ移行したい。そう考えたときに候補に挙がるのが「kintone」です。しかし、kintoneも万能ではありません。導入に失敗しないためには、まずkintoneの「得意・不得意」を正しく理解することが重要です。

2. kintoneが得意なのは「在庫の数字管理」と情報共有


kintoneが在庫管理において最も力を発揮するのは、“計算上、いくつあるべきか” を扱う「帳簿在庫」の管理と、そこに付随する情報共有 です。ロケーション管理やハンディターミナルのような“物理現場のオペレーション”よりも、事務側の在庫台帳づくり・可視化・連携の改善に強みを持ちます。

以下では、kintoneでできることを3つ紹介します。

■ 柔軟なマスタ管理とプロセス可視化

商品マスタに写真や図面を添付したり、ドロップダウンで分類分けをしたりと、自社の業務に合わせた台帳が簡単に作れます。また、標準機能の「プロセス管理」を使えば、「発注申請 → 承認 → 入荷予定」といったステータス管理も可能。単なる「数」の管理だけでなく、業務プロセスそのものを見える化できます。

■ コミュニケーションの集約

Excelにはない強みが「コメント機能」です。「来週の工事でこの部品を大量に使います」「この在庫、実数と合わないので確認お願いします」といった「誰が、いつ、何を言ったか」のやり取りを、在庫データに直接紐づけて記録できます。これにより、言った言わないのトラブルが減り、チームの連携がスムーズになります。

■ リアルタイムな状況把握

kintone上のデータは各現場で情報更新をしていれば常に最新で集約されます。ルックアップ機能計算フィールドを活用すれば、入出庫の履歴から現在の在庫数を自動計算し、アラート機能で「在庫が〇個を切ったら通知」といったリマインダーも設定可能です。「更新されていない」「数が合わない」といった問題から解放されます。

3. 導入前に知っておきたい、kintone在庫管理の“現場でつまずくポイント”

一方で、倉庫や店舗といった「現場での物理的な動き」にシステムを完全に合わせようとすると、kintoneの標準機能では壁にぶつかることがあります。以下を事前に知っておくことが重要です。

■ kintoneは現物チェックの棚卸は苦手

kintoneモバイルの標準機能ではバーコードの連続スキャンができないため、専用プラグインや外部連携が必要です。また、専用のハンディターミナルのように「ピッ、ピッ、ピッ」と連続して読み取る動作を行うことも難しく、スピードを最優先する現場ではストレスに感じる可能性があります。

■ 複雑なロジックには開発が必要

「先に入れたものから自動で引き当てる(先入先出法)」や「有効期限が近いものから優先的に割り当てる」といった複雑な自動処理を実装するには、JavaScriptなどによる個別のカスタマイズ開発が必要です。標準機能だけでは、こうした高度なロジックを自動化しにくい側面があります。

■ 厳密なトランザクション管理

複数の作業員が、全く同時に同じ商品の在庫数を更新しようとすると、「競合エラー」が発生することがあります。秒単位の厳密な排他制御(同時書き込み制限)が求められる大規模倉庫のような運用には、不向きな場合があるでしょう。

4. kintone在庫管理に“向いているケース・向かないケース”

ここまで紹介した通り、kintoneには強みと弱みがあります。では実際にどのような企業、どのような在庫管理に向いているのでしょうか?導入企業の傾向からまとめると、次のように分類できます。

■ kintoneでの在庫管理が「向いている」ケース

  • ・規模感 取り扱い点数や拠点数が中規模以下で、帳簿上の在庫管理で十分に運用できる

  • ・課題 Excelでの履歴管理や情報共有に限界を感じており、データの一元化とミス防止を優先したい

  • ・拡張性 在庫だけでなく、案件・見積・工事・顧客対応などの周辺業務もあわせて集約したい

  • ・コスト 専用WMS(倉庫管理システム)を導入するほどの規模ではなく、コストを抑えてスモールスタートしたい

■ 専用在庫管理システムを検討したほうが良いケース

  • スピード ハンディターミナルを用いたスキャンなど、大量の入出庫をスピーディーに処理する必要がある

  • 厳密性 ロット・シリアル番号・賞味期限など、詳細かつ厳密なトラッキングが必須である

  • 同時性 複数の作業員がリアルタイムで書き込む環境にあり、秒単位の排他制御が求められる

  • 複雑性 大規模な物流倉庫のような、複雑なロケーション管理を前提としている

kintoneと専用システムのどちらを選ぶべきか迷った際は、「在庫の正確さをどこまで求めるか」、そして「現場に不可欠なのは“速度”か“精度”か」という2点を整理することが大切です。

この2軸を整理しておくと、「メイン在庫は専用システムに任せ、kintoneは台帳・共有・分析に活用する」のか、「kintoneを在庫管理の中心に据え、“ライトな在庫管理”として運用する」のか、自社に合ったスタンスが見えやすくなります。

5. 弱点をカバーして成功させる、kintone在庫管理の設計・運用術


ここまで見てきたように、kintoneは「帳簿上の在庫管理」や「情報のリアルタイム共有」に強みを持つ一方で、複雑な倉庫オペレーションを厳密にシステム化するような用途には、向き・不向きがあります。

ただし、“ライトな在庫管理”に役割を絞り、その前提で設計と運用を工夫すれば、コストを抑えつつ大きな効果を得ることは十分に可能です。ここでは、kintoneで在庫管理を成功させるための設計・運用のポイントを4つ紹介します。

■ 「シンプル」なアプリ設計を行う

複雑な自動処理を目指さず、まずは「在庫マスタ」と「入出庫履歴(伝票)」の2つのアプリでシンプルに管理することをおすすめします。「履歴を登録すれば、マスタ側の在庫数が計算される」といった シンプルな運用からスタートし、社内で成功体験をつくることが定着の近道です。

■ 現場の「運用ルール」でシステムを補う

「リアルタイム入力にこだわりすぎない」「定期的な棚卸しで、帳簿と実在庫のズレを修正する運用ルールを作る」など、システムの限界を運用で補う視点が大切です。工夫次第で、高額な専用システムを導入せずとも、十分に実用的な管理体制が整います。

■ 現場が使いやすいUI(画面作り)を徹底する

スマホやタブレットでの入力画面は、現場担当者が直感的に操作できるよう工夫しましょう。例えば、入力項目を最低限に絞った専用ビューを作成したり、商品画像を大きく配置したりすることで、入力ミスや現場の負担を大幅に減らすことができます。

在庫管理アプリイメージ

■導入済みの在庫管理システムから「最新の在庫数」のみ連携する

すでに専門の在庫管理システムを利用している場合、そこで管理している「最新の在庫数」や「在庫状況」を、kintoneへ自動で連携(同期)させる活用法も非常に有用です。現場の作業効率は専用システムで担保しつつ、kintoneを「全社で在庫状況を可視化・分析するためのプラットフォーム」として活用する、理想的な使い分けが可能になるでしょう。

6. 在庫データが整ったら、次は「地図」で拠点の見える化へ

kintoneで「数字」と「情報」が整ったら、Excel管理では難しかった「位置情報の活用」という空間的な分析・判断に進めます。

特に、複数の拠点や倉庫を展開する企業において、「どの拠点に、どれくらいの在庫があるか」を文字情報だけで直感的に把握するのは困難です。そこで大きな力を発揮するのが、kintone上のデータを地図上へと展開する手法です。

■ Kマッププラグインで在庫を地図管理

当社のKマッププラグインを活用すれば、kintoneで管理している在庫データや拠点情報を、Googleマップ上へノーコードで簡単に連携・表示可能です。地図と連動させることで、以下のような高度な管理・分析が可能になります。

・在庫の偏りをひと目で把握:どのエリアで在庫が余り、どこが不足しているかを地図上で俯瞰できるため、最適な在庫配置の検討がスムーズに行えます。

・配送・移動の効率化:拠点間の位置関係がひと目でわかるため、最短ルートでの出荷指示や近隣拠点への在庫移動といった判断が、より迅速かつ的確に行えるようになります。

・ヒートマップによる直感的な分析: 個別のピン表示だけでなく、在庫のボリュームを「ヒートマップ」で可視化することも可能です。これにより、数字の羅列だけでは見落としがちな地域ごとの需要トレンドを、直感的にキャッチできるようになります。

「kintoneで在庫管理の土台を作り、Kマップで空間的な戦略を練る」
これこそが、脱Excelを果たした企業が目指すべき、スマートな在庫管理の姿です。
kintoneと地図連携を組み合わせることで、御社の在庫管理をもう一段階上のステージへとレベルアップさせませんか?
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