2026年06月03日
三井住友建設株式会社では、建築現場のプレキャスト部材の進捗管理をデジタルプラットフォーム化するためkintoneの活用を2023年から始めた。一目で見分けることが難しいプレキャスト部材の個体識別登録にRFIDを利用することで、地図上で倉庫内や現場のどこにあるのかを確認する仕組みを構築、2025年からは海外の工事現場にもKマッププラグインを追加導入し、施工管理の効率化を図っている。Kマッププラグイン導入前の課題や、導入によって変化した点についてご担当者にお話を伺った。
◆導入前の課題や背景
(1)従来は建物設計図に直接、部材の位置を記入しており、膨大な手間と時間がかかっていた
(2)工事中の建物情報が地図データへ更新されていることは稀で、古い地図情報に部材位置を記録しても、正確な位置をイメージしにくかった
◆導入の決め手
部材の製造ステータスや保管場所を即時に把握でき、現実の現場敷地の状況に即した場所に部材の位置を表示できること
◆導入後に得られた効果
図形描画やマップ上の色分け表示、スマホの活用により、実際の建物配置に即した感覚で部材のステータス(種類・保管形態など)を端末問わず把握できるようになった。その結果、現場での利便性が大きく向上した。
三井住友建設株式会社の強み
三井住友建設はプレキャスト工法による超高層ビルの建築、プレキャスト構造の橋梁が優位技術の一つであり、国内・海外全般へ展開している総合建設会社である。しかし近年、建設業界においても若手人材の採用難や熟練工の引退などにより、人手不足・技能継承が深刻な課題となっている。少ない人員でも作業の質を落とさず、効率的な業務を実現するため、三井住友建設では施工のDX化に積極的に取り組む。今回のインタビューで伺った、kintoneやKマッププラグインを活用したプレキャスト工事の進捗管理のICT化も、その取り組みの一貫だ。
Kマッププラグイン導入前の課題
三井住友建設では、2018年から自社システム「PATRAC」の開発に着手し、IoTを活用した管理システムの構築を進めてきた。その中で、kintoneなどICTシステムによる工程・工務・製造・物流・工事などの複数の関係者が個別に進捗管理していた作業を統合し、2023年に「PAE(PATRAC Apps Ensemble):プレキャスト進捗管理統合システム」として東京都内の超高層物件で実際に運用を開始した。
導入した物件では運用対象のプレキャスト部材が24,000pcsあり1ピース当たり20t~30tある部材を大型トレーラーで、1日平均60台を現場へ運搬する必要があった。国内21か所の工場・保管庫からの出荷を統合的な物流管理の仕組みで構築する必要があった。
当初、部材の位置情報登録は、撮影機材(スマホやiPad)の位置情報を利用して登録をおこなっていた。しかし、対象部材数が5,000ピースを超えてくると、場所移動や出荷時に部材リストを呼び出す手間が増え、写真データのアップロード時のネットワーク回線への負荷も高くなっており、登録操作の難易度の高さから人材が限定される点など、改善が望まれていた。
「従来、多種多様で大型のプレキャスト部材の保管管理は倉庫番のような人が、リストを片手に照合作業を行い、おおよその場所・出荷順番を把握することで管理していたが、時間外労働の上限規制の厳格化と熟練者不足も相まって、複数の人員体制で特別なスキルを持たずとも情報共有ができるシステム作りが喫緊の課題となりました」(菅谷氏)
Kマッププラグインを導入した理由
最初に取り組んだ改善は、ICチップによる固有のID番号をプレキャスト部材へ取付け、個体識別番号をデジタル化することであった。IDによる番号登録には複数の選択肢があるが、バーコード・QRコードなどの貼り付けタイプでは、屋外保管が基本のプレキャスト部材において、紫外線によるインクの劣化・雨天時の剥落などの可能性が高く、工事完了後に隠蔽部となるプレキャスト部材では保守管理などへの拡張性に課題が残る。そのためプレキャスト製品に埋込が可能なコンクリートスペーサ型のRFIDタグを自社開発し、RFIDリーダーのGPS機能との連携により位置情報を簡易に登録・更新できるシステムとして、Kマッププラグインを導入した。
「Kマッププラグインは、GPSに対応しており、自社PAEシステムでベースとなっているkintoneの仕組みとの親和性が高いのがポイントでした。複数社を検討しコスト面でも、必要な機能を必要な期間・現場に効率よく使えることが決め手となりました」(中谷氏)
Kマッププラグイン導入後の変化
Kマッププラグインの導入により、煩雑だった部材情報の識別や、実部材との照合は非常に簡素化された。複数の関係者が毎回目視チェックをしている限り、誤認・伝達ミスはいつか起きる可能性がある。それを未然に防ぎ、ビルの何階に使う部材なのか、保管場所はどこかを瞬時にピンポイントで判別できる操作性は非常に重要なポイントである。
さらにKマッププラグインは、工場での部材製造や出荷をする場面での進捗管理にも役立っている。従来、複数の工場・複数の保管ヤード・工事現場といった拠点間で出荷体制を連携させる際には、個別に都度連絡を取らなければならなかった。しかし、本プラグインは、マップ上に表示されるピンを出荷日別・部材種類別に表示することで、出荷管理の生産性は向上している。
「システム管理者にとっても設定がとても簡単で、自社プログラマーを抱えて作り込む必要がないので助かっています。プログラミングの専門知識がなくても、『こういう項目があると便利だな』と思ったときに、即応できるのが便利です」(中谷氏)
Kマッププラグインの最新機能を活用
2025年11月から海外工事でもKマッププラグインを活用した「PAE」を拡大展開した。第3国(ベトナム)の工場で製作された鉄骨部材を海上コンテナで輸送し、別の第3国(タイ)の現場で使用するまでの物流管理を「PAE」で管理した。現場は郊外にある1年ほど前に造成が完了したばかりの再開発地域のため、過去の街区・道路が表示されており実際の敷地・建物の位置情報の表示が課題となった。
仮想点をピンで表示するなど試みたが非常に分かりにくく解決方法を探していたところ、Kマッププラグインがアップデートしたことで解決した。具体的には図形描画機能を用いてヤード領域やエリア、通り芯の位置を地図上に表記することで、搬入したコンテナや部材が現場や保管ヤード上どのエリアにあるか、直感的に分かりやすくなった。ハンディターミナル端末を使用してQRコードを読み取ることで、簡単に管理ステータスや位置情報を更新することができた。
Kマッププラグインに今後期待すること
RFIDによって位置情報を取得し、Kマッププラグインを組み合わせることで、部材管理の精度と管理手間の削減が大幅に向上した三井住友建設のPAE。現場で部材を受け入れる担当社員も、ワンクリックで位置情報の登録・更新、搬入完了のチェックが行え、現場と工場とのリアルタイムな情報連携ができている。
ただ、課題(改善要望)もある(中谷氏)
一つ目は、現時点では部材の位置情報がまれに10メートル以上も位置飛びしている場合があり、精度向上が望まれること。GPS端末に依存する部分が大きいことは理解しているが、長さ10m近い大型部材と云えど5メートル以内に納まって欲しい。
二つ目は、kintoneを立ち上げた際に現在位置が初期化されてしまう点。現状では初期設定の位置が一律なので、自分たちの工場の情報を見たいと思っても地図をスクロールしなければならず、管理負荷を感じている。(地図の初期位置の改善については、将来的な実装を検討中。)
三つ目は、他言語対応が完全でない部分があったため、今後の海外案件展開のためにも改善をお願いしたい。
今後、建設業界ではさらなる人手不足が進むことで、関係者間で業務をリアルタイムで共有でき、言語・文化・慣習の違う外国籍者とも円滑に共有できるシステムは需要が高まると予測しています。Kマッププラグインは直感的な操作で利用できるため、プレキャスト部材以外の様々な工種の管理に拡張できるのではないかと将来性を感じます。「PAE(プレキャスト進捗管理統合システム)」は単なる管理の効率化にとどまらず、熟練者の知見をデジタルに蓄積しつつ、次世代へ作業手順を引き継ぐための基盤といえる。
「目新しいテクノロジーの導入」に目が向きがちなデジタル化だが、実際には現場の課題を正しく把握し、それに合う形でシステムを柔軟に組み合わせることが成功の鍵となる。同社の事例は、まさにその本質を体現したものだった。
ぐーどろでは、今回の三井住友建設様の事例のようなkintoneプラグインや連携サービスへの対応はもちろん、AWSなどの外部システムと連携したシステム開発、アジャイル方式での開発・伴走支援、および請負での開発サービスも提供しています。ぜひお気軽にご相談ください。
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参考情報
・Kマッププラグイン製品紹介ビデオ



